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民泊新法について

弁護士 天野雄介

平成29年7月12日更新

第1 民泊新法の成立
 平成29年6月9日住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)が成立しました。
 法律の施行は平成30年1月が有力視されています。
 これまで宿泊を事業として適法に行うためには、旅館業法に基づく許可(簡易宿所)を得たり、国家戦略特区での民泊条例に基づく認定(特区民泊)を受けたりするしかありませんでしたが、民泊新法により届出のみで宿泊事業を行えることとなりました。
 ただし、第2のとおり、民泊新法にもメリット・デメリットがあり、民泊を事業として行う場合は、物件によっては従来の簡易宿所の許可または特区民泊での認定を受けることも選択肢となるかと思われます。

第2 民泊新法の内容
 民泊新法の特徴は、@届出で可能、A1泊から可能、B営業日数は180日以内、Cマンションでも可能、D条例で日数制限が可能などです。
 @については詳細は決まっていませんが、簡易宿所の許可や特区民泊の認定などよりは簡易な手続となるかと思われます。
 Aについては、特区民泊が現行2泊3日以上という制限があるのに対し、新法ではそのような制約はなく、旅行者に利用しやすくなっています。
 Bについては、新法の一番のポイントと思われます。
 180日以内の民泊営業のみ(逆に言えば年間185日の空室期間)で営利事業として成立させるのはかなり困難ですので、活用方法を検討する必要があるでしょう。
 Cについては、簡易宿所や特区民泊では基本的には難しい分譲マンションでの民泊が法律上可能です。ただし、条例で規制されたり、マンションの管理規約で禁止されていたりする場合は民泊できませんので、注意が必要です。
 Dについては、各地域によって可能な地域(一切認めないという日数制限も考えられています)や日数が制限がありますので、事前の調査が必要です。
 なお、民泊新法については成立しましたが、同法で定められるとされている国土交通省令・厚生労働省令がまだありませんし、民泊新法を制限できる条例もまだありませんので、その詳細が不明な点もあります。

第3 民泊新法の活用
 今回、民泊新法が成立したため、これまで民泊ではほとんどがヤミ民泊(違法民泊)であった状況からは大きく変化していくものと思われます。
 民泊新法では、住宅宿泊仲介業者(airbnbなどのインターネット上の仲介業者など)が登録制となり、行政に対して報告義務が発生したため、届出のないヤミ民泊は扱わない可能性が高くなるためです。
 ただ、上記のとおり、民泊新法にも日数制限などの問題があります。
とすると、民泊新法の活用例としては、遊休資産、売却予定がある場合やいつから自己使用するかわからず賃貸には出したくない物件、リゾート物件などの繁忙期がある物件などを180日以内で民泊として活用する場合などがあります。
 また、180日以内の民泊とマンスリーマンションなどを組み合わせて二毛作で物件を活用したり、賃貸物件の空室期間のみ活用したりするなど、色々と組み合わせて利用することも考えられます。
 これから民泊新法の詳細が決まるにしたがって、様々なビジネスプランが生まれてくるかと思われます。

第4 民泊新法の法律問題
1 新しいビジネスモデルによる契約関係
 新しいビジネスモデルによる契約を締結する場合、標準的な契約書雛形が存在しない場合も多く、自作の契約書によりトラブルとなることが懸念されます。
 特に上記のとおり2毛作となる場合は、二つの契約関係が発生しますので、そのような複合的契約については弁護士でも頭を悩ますことも多くあります。
 複雑なビジネスモデルの場合にも専門家の関与が必要です。
2 不動産取得関係
 これからの不動産の取引において、民泊を営利事業として行う目的で売買する案件も増加していくものと思われます。
 そして、これまでの不動産取引の場合、民泊はヤミ民泊の場合が多く、契約書等に民泊目的であることは記載されていませんでしたが、これからは契約書に記載がなされたり、仲介業者に民泊目的での取得を明らかにしたりする案件も増えてくるでしょう。
 そのような場合、例えば、民泊目的で取得したのに民泊ができなかった場合などに売買契約の瑕疵や仲介契約の説明義務違反などの法律問題が発生する可能性があります。
 契約書や重要事項説明書に何をどこまで記載するのかなどを、特に不動産仲介業者は検討する必要があります。
3 マンション管理規約の改正
 分譲マンションでの民泊について、民泊の届出時に、管理規約に民泊を許さない旨の記載がないことを確認する方針となっています。
 とすると、分譲マンションにおいて民泊を好ましくないと考える場合は、管理規約の改正が必要です。
 そして、この管理規約の改正はできるだけ速やかに行う必要があります。
 現在では届出時の管理規約に民泊を許さない旨の記載がないことだけが届出の要件となる可能性があり、届出後に管理規約が改正された場合にすでに届出がなされている物件について法律上民泊が不可能となるかは不明であり、そのまま事実上民泊が行われる可能性があるためです。
 民泊新法の施行までに管理規約の改正をすることをお勧めします。
 以上
                                                                    

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