本文へ


リーガルトピックス(Legal topics)

ホーム > リーガルトピックス >令和4年>宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン

リーガルトピックス(Legal topics)

一覧に戻る

宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン

弁護士 村上智裕

令和4年5月2日更新

 国土交通省は、令和3年10月8日、「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました。
 不動産取引では、当該取引の対象不動産において生じた過去の人の死に関してのトラブルが増加しています。「人の死」には、その態様によっては人に嫌悪感を抱かせ、住居としての効用を心理的に減退させると言い得るものがある、とされているからです。

 そのようなトラブルの原因は、契約者が当該人の死について予め知らされていなかったことにあります。したがって、当該取引に関わる宅地建物取引業者において、予め人の死について調査し、契約者に告知しておけばトラブルは防ぐことができると言えますが、一方、そもそも人は必ず死ぬものであり、特に住宅であれば過去に人が亡くなっていることは当然とも言い得ることですので、宅地建物取引業者にとってみれば、「人の死」はどこまで調査し、どこまでを告知しなければならないのか悩ましい事項でもありました。

 「人の死」が心理的瑕疵にあたるのか、という点について判断した裁判例もこれまでに蓄積されているとは言えますが、裁判では、当該事例ごとに複数の要素(人の死の態様、事故・事件からの経過年数、近隣住民の周知の程度…等)を総合して瑕疵の有無を判断するという手法がとられますので、どの裁判例も”事例判決”の色合いが強く、宅地建物取引業者にとっては過去の裁判例を見ても”いざ目の前にある事案についてどう考えるべきか”については判断が難しいところがあったと思います。

 今般のガイドラインは、かような問題があった心理的瑕疵のラインを国土交通省が示したものであり、宅地建物取引業者に対して同一のルールを示したという点において意義のあるものだと考えます。内容の詳細はガイドラインそのものをご確認いただきたいですが(https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001426603.pdf)、国土交通省は要点として、①宅地建物取引業者が媒介を行う場合、売主・貸主に対し、過去に生じた人の死について、告知書等に記載を求めることで、通常の情報収集としての調査義務を果たしたものとする、②取引の対象不動産で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)については、原則として告げなくてもよい、③賃貸借取引の対象不動産・日常生活において通常使用する必要がある集合住宅の共用部分で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死以外の死が発生し、事案発生から概ね3年が経過した後は、原則として告げなくてもよい、④人の死の発生から経過した期間や死因に関わらず、買主・借主から事案の有無について問われた場合や、社会的影響の大きさから買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合等は告げる必要がある、との点を挙げています。 

以上 
                                                                    

一覧に戻る

リーガルトピックス(Legal topics)