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育児・介護休業法の改正について

弁護士 永田守

平成29年2月7日更新

 ご存知の方も多いかと思いますが、育児・介護休業法は、平成28年4月に改正され、本年(平成29年)1月1日より施行されました。この改正は、小さな子供や介護が必要な家族を抱えながら仕事をしている方が、育児や介護をしながらも仕事を続けやすいようにすることを目的とするものです。事業主の方々は、改正法が施行されたことを受け、改正法に基づく休暇等の申請が従業員の方からなされた場合等に対応するため、改正内容を十分理解しておく必要があります。以下では、簡単にですが、施行された育児・介護休業法の改正内容のポイントをご紹介します。

1. 子の看護休暇及び介護休暇の取得単位が半日に 
   子の看護休暇及び介護休暇について、改正前は1日単位での取得しか認められませんでしたが、改正後は半日単位での取得が可能となりました。
 なお、子の看護休暇とは、 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者(日々雇用される方を除く)が、1年に5日(子が2人以上の場合は10日)まで、病気やけがをした子の看護又は子に予防接種、健康診断を受けさせるため取得が認められる休暇です。また、介護休暇とは、要介護状態にある対象家族の介護その他の世話を行う労働者(日々雇用される方を除く)が、1年に5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで、介護その他の世話を行うため取得が認められる休暇です。

2. 介護休業の分割取得が可能に
   介護休業の取得については、改正前は、介護を必要とする家族(対象家族)1人につき、通算93日まで原則1回に限り可能でしたが、改正後は、対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として介護休業を分割して取得をすることが可能となりました。対象家族の範囲は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹及び孫です。祖父母、兄弟姉妹、孫については、同居・扶養要件は不要となりました。
 なお、介護休業とは、労働者(日々雇用される方を除く)が、要介護状態(負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)の対象家族を介護するため取得が認められる休業です。

 3. 介護のための残業の免除の請求が可能に
   介護のための残業の免除(所定外労働の制限)について、改正前には認められていませんでしたが、改正後は、要介護状態にある対象家族がいる限り、介護終了までの期間について残業の免除の請求をすることができる新制度が導入されました。事業主は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者がこの請求した場合においては、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定労働時間を超えて労働させることはできません。免除の請求は、1回につき、1か月以上1年以内の期間について、開始の日及び終了の日を明らかにして、制限開始予定日の1か月前までにしなければなりません。また、この請求は、何回もすることができるものとされています。

 4. 有期契約労働者の育児休業の取得要件の緩和
   改正前は、育児休業の申出時点で、@過去1年以上継続して雇用されていること、A子が1歳になった後も雇用継続の見込みがあること、B子が2歳になるまでの間に雇用契約が更新されないことが明らかである者でないこと、という要件を充たす方に限り、育児休業の取得が認められていました。改正後は、要件が緩和され、申出時点で、@過去1年以上継続し雇用されていること、A子が1歳6か月になるまでの間に雇用契約がなくなることが明らかでないこと、という要件を充たしていれば育児休業の取得が可能となりました。いわゆるパートや契約社員の方についても、育児休業を取得できる範囲が拡大されたものと言えます。

 5. 介護のための所定労働時間の短縮措置等
   介護のための所定労働時間の短縮措置等(選択的措置義務)とは、事業主が、要介護状態にある対象家族の介護をする労働者に対して、対象家族1人につき、@所定労働時間の短縮措置、Aフレックスタイム制度、B始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ、C労働者が利用する介護サービス費用の助成その他これに準じる制度、のうちいずれかの措置を選択して講じなければならないとする制度です。
 この介護のための所定労働時間の短縮措置等(選択的措置義務)について、改正前は、介護休業と通算して93日の範囲内でのみ取得を可能とするものでした。しかし、改正後は、介護休業と通算するのではなく介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上の利用が可能となりました。

 6. 育児休業等の対象となる子の範囲の拡大
   育児休業、子の看護休暇等について、その対象となる子は、改正前は、法律上の親子関係である実子・養子のみでした。改正後は、特別養子縁組の監護期間中の子、養子縁組里親に委託されている子といった法律上の親子関係に準じると言えるような関係にある子についてもその対象として追加されました。

7. いわゆるマタハラなどの防止措置義務の新設
   いわゆるマタハラなどの防止について、改正前にも、事業主による妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする不利益な取扱いは禁止されていました。改正後は、これに加え、上司・同僚からの、妊娠・出産、育児休業、介護休業等を理由とする嫌がらせ等(いわゆるマタハラ・パタハラなど)を防止する措置を講じることが事業主に対して新たに義務付けられました。また、派遣労働者の派遣先にも、育児休業等の取得等を理 由とする不利益取扱いの禁止や妊娠・出産、育児休業、介護休業等を理由とする嫌がらせ等の防止措置の義務付けがされることなりました。

 以上の内容は、あくまで改正法の概要についてポイントを絞ってご紹介したものです。その他にも多くの改正項目があり、また上記各規定についても個別の例外規定等がある場合がありますのでご注意ください。詳しくは厚生労働省のホームページに改正育児・介護休業法についての資料が掲載されていますのでご参照いただければと思います。
 以上
                                                                    

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