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新型コロナウイルスの影響について

弁護士 礒川剛志

令和2年11月2日更新

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、社会の様々な場面で影響が出ています。業績が悪化し、経営がひっ迫する企業や店舗がある一方、解雇や給与減額などで収入が確保できない個人の方々もいます。さらに結婚式等のキャンセルといった事業者と消費者の間のトラブルも頻発しています。

1.公的支援の積極的な活用
 個人向けには、1人あたり10万円が支給される特別定額給付金や、住居確保給付金(家賃3か月~9か月分)等の公的支援が実施されています。また、失業する等して収入が確保できない場合は、生活保護制度の利用も考えていく必要があります。
 事業者向けには、持続化給付金(個人自営最大100万円、法人最大200万円)、雇用調整助成金等の申請を検討されるべきです。また、資金繰りの維持という意味では、政府系金融機関(日本政策金融公庫・商工中金)による融資等、できるだけ手持ち資金に余裕を持たせておくのが良いでしょう。

2.コロナ禍による主な法律問題
1)労働問題
 コロナ禍による業績悪化により解雇されたり、休業させられたのに休業手当がもらえないといった労働関係の相談が増えています。
 たとえ業績悪化が事実であったとしても、会社からの解雇が認められる要件は判例上厳しく設定されており、要件を充たしていない場合は不当解雇と判断されます。また、会社が業績悪化を理由に従業員に休業を求める場合は、法律上、平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければならないとされています。
2)賃料減額交渉
 飲食店などのテナントがコロナ禍で収入が激減したため、店舗の貸主に賃料減額を申し入れるケースが頻発しています。本来、コロナ禍によるテナント店舗の収入減少自体は、賃料減額の根拠になるものではありません。通常の賃料減額交渉は、不動産価値や税金の減少、近隣賃料相場の動向が根拠となるものだからです。
 一方で、貸主としてもテナントが倒産することは望ましいことではなく、一定の期間を設定して賃料の一部を減額したり、支払を猶予するといった対応を行う場合もあるようです。
3)イベントのキャンセル料
 典型的には結婚披露宴をコロナ禍を理由にキャンセルした場合に式場からキャンセル料を請求されるといったトラブルがあります。式場との契約条件がどうなっているかにもよりますが、仮に契約上、キャンセル料を支払わなければならない場合も、消費者契約法によりその金額が限定される可能性があります。キャンセル料は、式場の損害を予定したものであるため、平均的損害の額を超える請求は消費者契約法により認められないからです。
4)給付金詐欺
 例えば、個人事業主でもないのに、ウソの書類を準備して持続化給付金を申請するというものですが、立派な詐欺罪に該当します。知人からの紹介で、学生等がよく分からないままにアルバイト感覚で不正受給の片棒を担いでしまうというケースが頻発しています。逮捕・起訴される可能性が十分ありますので、このようなトラブルに巻き込まれないよう注意する必要があります。

3.今後の予想
 公的支援や緊急融資によりいったん資金繰りが維持できた企業や店舗の財務状況が今後悪化し、倒産が増えてくる可能性があります。場合によっては民事再生や事業承継といった手段により、破産を回避できるケースもありますので、早めに弁護士等の専門家に相談いただくのが良いと考えます。
 以上
                                                                    

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