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財産開示制度について

弁護士 中村美絵

令和3年5月6日更新

 判決で金銭の支払いが命じられているにもかかわらず、債務者が支払わない場合、強制執行の手続きをとることができます。
 しかし、金銭債権について債権者が強制執行をするには、相手方の財産を特定して行う必要があり、相手方の財産の調査は困難なため、判決をとっても、強制執行が不能となってしまう問題が生じていました。このような問題を回避するために、平成15年に、債権者の財産に関する情報を取得する手続きとして「財産開示手続」が導入されました。この制度は、債権者が裁判所に申立をし、裁判期日に債務者を出頭させ、自己の財産に関する陳述をさせるという手続きです。しかし、利用範囲が限られ、実効性が不十分であったことから、利用実績は低調でした。
 そこで、令和2年4月1日に、改正民事執行法が施行され、債務者財産の情報取得の実効性を向上するために、財産開示制度の見直しがなされました。
具体的には、以下のとおりです。

申立権者の範囲の拡大
 確定判決だけでなく、仮執行宣言付き判決や公正証書により金銭の支払を取り決めた者等も申立が可能になりました。

第三者からの情報取得手続きの新設
   公的な機関から不動産・給与債権に関する情報を取得する制度、金融機関等から預貯金債権・振替社債などに関する情報を取得する制度が設けられました。
 同制度のうち、給与に関する情報取得手続き及び預貯金等に関する情報取得手続きについては、令和2年4月1日より開始していますが、不動産に関する情報取得手続きについては、令和3年5月1日より開始され、執行裁判所が情報の提供を命じる登記所は東京法務局と定められました(令和3年3月30日 「民事執行法第二百五条第一項に規定する法務省令で定める登記所を定める省令」)。

 ③ 手続き違背に対する罰則の見直し 
   改正前は、財産開示期日の不出頭や虚偽供述に対する罰則として30万円以下の過料が定められていましたが、改正後は、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する刑事罰が導入されました。
 実際に、改正後、財産開示期日に出頭しなかった人が書類送検されたということがニュースになっていました。

 本改正により強化された財産開示制度を利用することにより、これまで泣き寝入りをしなければならなかったケースでも、債権を回収できる可能性が高まりました。
 金銭債権の回収にお困りの場合は、財産開示制度の利用も視野に入れて、専門家である弁護士にご相談ください。 

以上 
                                                                    

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