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医療を受ける子どもの人権 〜CLS(チャイルドライフスペシャリスト)・HPS(ホスピタルプレイスペシャリスト)をご存知ですか〜

弁護士  中村美絵

平成23年6月13日更新

 平成23年5月21日、私が所属している大阪弁護士会主催で、「医療を受ける子どもの人権」をテーマにしたシンポジウムが、大阪弁護士会館で開催されました。私は、このシンポジウムに、実行委員として関わらせていただきましたので、シンポジウムの内容に関して一部ではありますが簡単に紹介をさせていただきます。

 医療を受ける子どもたちにとって、治療を受けて健康を回復するということが最優先とされることは当然です。しかし、医療を受ける子どもたちも、成長発達する一人の人間です。自分がどんな病気なのか、何の検査をするのか、学校の勉強はどうなるのか、入院すると親に自由に会えなくなるのか…と様々な不安と恐れを抱えています。治療が最優先される中で、子どもにとってこのような大切な問題が見過ごされてきたのではないかという問題意識から、本シンポジウムは開催されました。
 シンポジウムでは、子どもたちを取り巻く医療環境の現状について、大阪弁護士会による医療機関等の訪問結果の報告と、近畿圏の医療機関に対して行ったアンケート調査結果の報告が行われました。
 また、実際に医療現場で子どもたちと関わる医師、ホスピタルプレイ士(HPS)、病弱特別支援学校教頭、元小児がん患者の方からそれぞれお話を伺いました。

 ところで、今回のシンポジウムでお話をしていただいた方の中に、ホスピタルプレイ士(HPS)という職業の方がいらっしゃるのですが、みなさんは、CLS(チャイルドライフスペシャリスト)やHPS(ホスピタルプレイスペシャリスト)という職業をご存知でしょうか。
 CLSやHPSは、病気や障がいを持つ子どもの成長発達を支援し、入院や治療を受ける子どもに、遊びや楽しみを提供したり、医療行為について理解するのを助ける役割を果たす専門的な職業です。HPSはイギリスの国家資格であり、CLSは、アメリカ又はカナダにおいて勉強をしてチャイルドライフ学会による資格認定を受けなければならず、HPSとCLSは厳密には別の職種とされていますが、その役割や活動の目的は同じと考えられています。欧米諸国では、CLSやHPSが小児医療において標準的なスタッフとされています。日本でも、その概念は広まりつつあり、現在、日本の医療機関において、海外で資格をとったCLSやHPSが、20数名活動されています。
 しかし、上述のとおり、CLSやHPSの資格を取得するには、海外に留学をしなければなりませんので、なかなか簡単に普及することができません。また、日本にはCLSやHPSに準ずる専門職はありませんでした。
 そのような現状をふまえ、2011年4月、CLSやHPSのような専門性を持った専門職を日本で育成しようと、「子ども療養支援協会」が発足し、日本におけるCLSやHPSの職種は「子ども療養支援士」と名付けられ、その養成が開始されています。
 今後は、各病院で、「子ども療養支援士」が配置され、みなさんにとって、身近な職業になるかもしれません。
 「子ども療養支援士」が普及することにより、子どもの人権が尊重される、よりよい医療環境となることが期待されます。

【参考文献】
・「医療における子どもの人権」(栃木県弁護士会「医療における子どもの人権を考えるシンポジウム」実行委員会)
・子ども療養支援協会ホームページ http://kodryoyo.umin.jp/
                                                                         
   

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