本文へ


リーガルトピックス(Legal topics)

ホーム > リーガルトピックス >平成25年 >非訟事件手続法について

リーガルトピックス(Legal topics)

一覧に戻る

非訟事件手続法について

弁護士 松本史郎

平成25年2月5日更新

1 「非訟事件手続法」の施行
 家事事件手続法が平成25年1月1日から施行されました。これと同時に新しい「非訟事件手続法」が平成23年5月19日成立(同月25日発布)し、平成25年1月1日から施行されました。

2 非訟事件とは
 非訟事件とは、抽象的には裁判所が判断しなければならない事件で訴訟事件(紛争当事者の実体的権利、義務の存否を確定することを目的とする事件)以外のものをいいます。
 具体的には、例えば、借地非訟事件、会社非訟事件、民事非訟事件、公示催告事件、各種法人における清算人の解任事件等が非訟事件にあたります。
 非訟事件手続法の第二編(非事件の手続の通則。同法3条ないし84条)は、他の法律、規則で明示的に適用を排除されているものを除き、原則として上記の非訟事件にも適用されます。
 非訟事件手続法第二編(非訟事件の手続通則)における主な見直し点は次のとおりです。
 (1) 当事者等の手続保障を図るための制度の拡充
   @ 参加制度の創設
 裁判結果に利害関係を有する当事者以外の者が非訟事件の手続に参加することができるようになりました。
   A 記録の閲覧、謄写に関する制度の創設  
   当事者等が非訟事件の記録の閲覧、謄写をすることができるようになりました。
   B 不意打ち防止のための諸規定の創設  
   裁判所が判断の基礎となる資料を収集した場合には、これを当事者に通知したり、これについて当事者に陳述の機会を与えることとしました(手続の透明性の確保)。
 (2) 国民が非訟事件手続をより利用しやすくするための制度の新設  
    @ 電話会議システム、テレビ会議システムを利用して期日の手続を進めることができる制度の創設
      (遠方の当事者がわざわざ裁判所まで出向く必要がなくなりました)
   A 和解、調停制度の創設  
   従前の非訟事件手続法には和解、調停に関する規定はありませんでしたが、今般新たにこの和解、調停の制度が創設されました。
   B 専門委員制度の創設
   非訟事件の中にも専門的知見が必要となる事件が多くあります(例えば非上場株式の株価の算定など)ので、裁判所が随時専門家の意見を聴取するなど、機動的に専門的知見を得ることができる制度を新設しました。

3 借地非訟事件、会社非訟事件  
 このリーガルトッピクスを読まれている方々にとっては、民事非訟事件、公示催告事件などはあまり身近に接することがないと思われますのに対し、借地非訟事件、会社非訟事件などは身近に経験される問題ではないかと思います。したがって、ここでは非訟事件の中でも特に借地非訟事件と会社非訟事件の具体的な場面を解説することとします。  
 (1) 借地非訟事件  
   借地非訟事件とは、地主と借地人との間で下記@〜C等について協議したが、地主がこれを承諾しない場合に、地主の承諾に代わる裁判所の許可を求める手続です(裁判所の許可があれば、地主の承諾があったと同じことになります)。
   @ 借地条件(借地の目的である建物の構造、種類、規模等を制限する借地条件)の変更(借地借家法17条1項)  
   A 借地上の建物の増改築等の承諾(同法17条2項)
   B 借地契約更新後の建物再築の承諾(同法18条1項)
   C 土地の賃借権の譲渡又は転貸の承諾(同法19条1項)
   上記@〜Cの借地非訟事件の多くは一定の金員(@の場合は更地価額の概ね10%程度、Aの場合は更地価額の概ね3%程度、Bの場合は更地価額の概ね3%〜10%の間程度、Cの場合は借地権価額の概ね10%程度)を地主に支払うことを条件に許可されるケースが多いと思われます。
(借地非訟事件の手続については、借地借家法及び借地非訟事件手続規則にその詳細が規定されています)。
 (2) 会社非訟事件  
   @ 株式の価格の決定  
   ア 株式売買価格決定
     会社の定款上、株式の譲渡制限の定めがある場合、株式を譲渡しようとする株主は、会社に対し、書面で譲渡を承認すべきこと又はこれを承認しないときは譲渡の相手方を指定すべきことを請求できます。会社が譲渡の相手方を指定したときは、株式を譲渡しようとする株主は、その指定された相手方と株式の譲渡価額について協議することとなりますが、価額について協議が調わない場合、当事者の請求によって裁判所が株式の売買価格を決定することとなります。
   イ 株式買取価格決定  
     一定の決議(営業譲渡、合併等組織上の重要な変更決議)に反対する株主は、一定の手続を経て会社に対し、自己の所有株式を公正な価格で買取るよう請求することができます。この場合、買取価格について株主と会社との間で協議が調わないときは、株主の請求によって裁判所が株式の買取価格を決定します。
   A 検査役の選任
   B 株主総会の招集許可
   C 一時職務代行者の選任
   D 清算人選任及び解任
  (これら@〜Dはいずれも申立に基づき、裁判所が会社非訟事件手続に沿って、決定処分することとなります。会社非訟事件の手続については、会社法及び会社非訟事件等手続規則にその詳細が規定されています。) 

                                                                    

一覧に戻る

リーガルトピックス(Legal topics)