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会社法改正の概要

弁護士 中村美絵

平成27年1月7日更新

 会社法は、平成17年に制定、平成18年5月1日より施行されました。平成22年に、法制審議会において、コーポレート・ガバナンスの強化、親子会社に関する規律の整備、既存の規定の制度間の整合性の検討の必要性等から、会社法改正の議論がなされました(注1)。そして、平成26年6月20日「会社法の一部を改正する法律案」が国会で可決され、同月27日に公布されました。改正法の施行日は、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日とされており、平成27年5月1日から施行することが予定されています(注2)。
 今回は、会社法改正の主な内容のうち、企業統治(コーポレート・ガバナンス)強化に関する改正の概要について説明いたします。

 〔企業統治(コーポレート・ガバナンス)強化に関する改正の概要〕
1 監査等委員会制度の創設(改正法331条6項、399条の2第1項)
 取締役会の監督機能の充実という観点から、新たな機関として、監査役を置かずに、3人以上の非業務執行者である取締役(過半数は社外取締役であることが必要)によって構成される監査等委員会を設置する監査等委員会設置会社制度が創設されました。新制度の創設により、現行の「委員会設置会社」は、「指名委員会等設置会社」に名称変更されます。
 自ら業務執行を行わない社外取締役を複数置くことにより、業務執行と監督の分離を図りつつ、そのような社外取締役が監査を担うとともに、経営者の選定・解職等の決定への関与を通じて監督機能を果たすことになります(中間試案補足説明第1部第1の2(1)ア)。

2 社外取締役を置いていない場合の理由の開示(改正法327条の2)
   取締役会の決議において議決権を有する社外取締役には、経営全般の監督機能、利益相反の監督機能が期待されることから、社外取締役を活用すべきとの指摘があり、改正にあたっては、社外取締役の選任の義務付けが議論されていました。しかし、経済界からの強い反対を受け、社外取締役の選任義務付けは見送られることになりました。ただし、社外取締役選任を義務付けない代わりとして、公開会社かつ大会社であって、その発行する株式において有価証券報告書の提出義務を負う株式会社が社外取締役を置いていない場合には、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を事業報告書の記載事項とすることとされました。

3 社外取締役及び社外監査役の社外要件の厳格化(改正法2条15号、16号)
   社外取締役の経営に対する監督機能の実効性を高めるという観点から、社外要件が厳格化されました。また、監査役についても、取締役と監査役とではその権限等に相違はあるものの社外取締役の要件を見直す場合には社外監査役の要件についても同様の見直しをすべきとの指摘を受け、同様に社外要件が厳格化されました。
従来は、社外取締役の資格は、現在または過去において当該会社または子会社の業務執行取締役、執行役、支配人その他の使用人でないことのみが必要とされていました。
 今回の改正では、従来の資格要件のうち、過去の部分については、「就任前10年間」に限定され緩和されました。
 そして、従来の要件に加え、@親会社等(親会社又は当該会社の経営支配株主(自然人))の取締役、執行役、使用人でないこと、A当該会社の親会社等の子会社等(兄弟会社)の業務執行取締役等でないこと、B当該会社の取締役・執行役、重要な使用人または経営支配株主(自然人)の配偶者や二親等内の親族ではないこと、の要件が追加され厳格化されました。なお、上記@〜Bのいずれも、「現在」これらに該当しないことが求められるものであり、「過去」の要件はありません。

4 会計監査人の選任解任等に関する議案の内容の決定(改正法344条)
   従前は、監査役設置会社における会計監査人の選解任・不再任に関する議題・議案、報酬等の決定については、会計監査人による監査を受ける立場にある取締役・取締役会の権限とされており、監査役(会)は、会計監査人の選任解任等に関する議案等への同意権及び議案等の提案権、報酬等への同意権を有するものとされていました。
 しかし、会計監査人の独立性の観点から問題があるため、改正法においては、監査役(会)設置会社においては、株主総会に提出する会計監査人の選任・解任等に関する議案の内容は、監査役(会)が決定するものとされました。
 なお、会計監査人の報酬等については、株式会社の財務に関する経営判断と密接に関係することから、取締役・取締役会がこれを決定することが適切であるとの考えにより、従前どおり、監査役(会)は同意権を有するにとどまることになりました。

5 その他  
  責任限定契約を締結することが可能な役員の範囲の改正(改正法427条1項)
     社外取締役や社外監査役であるか否かに関わらず、業務執行を行わない取締役や監査役が責任限定契約を締結することが可能になりました。
  多重代表訴訟制度の新設(改正法847条の3)
    最終完全親会社等の株主による特定責任追及の訴えが新設されました。

 
(注1)「株式会社をめぐる最近の社会経済情勢に鑑み、社外取締役等による株式会社の経営に対する監査等の強化並びに株式会社及びその属する企業集団の運営の一層の適正化等を図るため、監査等委員会設置会社制度を創設するとともに、社外取締役等の要件等を改めるほか、株式会社の完全親会社の株主による代表訴訟の制度の創設、株主による組織再編等の差止請求制度の拡充等の措置を講ずる必要がある」との理由で会社法改正の法案が提出されました。
(法務省ウェブサイト http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00151.html

(注2)法務省ウェブサイト(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00164.html
 

【参考文献】
1 阿部泰久「立法経緯から読む会社法改正」(新日本法規 2014) 
2 法務省ウェブサイト(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00151.html
3 野村修也・奥山健志「平成26年改正会社法」(株式会社有斐閣 2014)
                                                                    

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