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不当景品類及び不当表示防止法の改正 〜課徴金制度の導入〜

弁護士 小西宏

平成27年1月27日更新

 平成26年11月19日に、臨時国会において、不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律(平成26年法律第118号)が成立しました(公布は、同月27日。施行は公布日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日)。
 これにより、景表法には今までになかった課徴金の制度が導入されることになりました。本稿では、改正された不当景品類及び不当表示防止法(以下、「改正景表法」といいます。)に新たに導入された課徴金制度についてご紹介します(注1)。
 
1 課徴金制度導入の趣旨
 ホテルや百貨店、レストラン等で食品表示等の偽装が社会問題化したことは記憶に新しいかと思います。このような食品表示等の偽装の発覚が相次いだことにより、国内外の消費者からの、日本の食への信頼は失墜する事態となりました。
 このような事態を受けて、政府は、食品表示等の適正化に向けて、その対策の一貫として、不当表示に対する抑止力としての課徴金制度(課徴金とは、一定の違反行為に対して行政庁によって課される金銭的な負担をいいます。)の導入を検討することとなりました(注2)。
 今般、その流れを受けて、昨年秋に景表法が改正され、新たに課徴金が導入されることになりました。

2 改正景表法の概要
(1) 対象行為
 課徴金納付命令の対象行為は、優良誤認表示と有利誤認表示です。
     優良誤認表示
     優良誤認表示とは、「商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」(改正前景表法4条1項1号、改正景表法5条1号)をいい、具体的には、商品・サービスの品質を、実際よりも優れていると偽って宣伝したり、競争業者が販売する商品・サービスよりも特に優れているわけではないのに、あたかも優れているかのように偽って宣伝する行為が優良誤認表示に当たります。
例えば、優良誤認表示の例として、実はブランド牛ではない国産牛肉であるのに、国産有名ブランド牛の肉であるかのように表示する行為などがこれに当たります。
     有利誤認表示
     有利誤認表示とは、「商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」(改正前景表法4条1項2号、改正景表法5条2号)をいい、具体的には、商品・サービスの取引条件について、実際よりも有利であると偽って宣伝したり、競争業者が販売する商品・サービスよりも特に安いわけでもないのに、あたかも著しく安いかのように偽って宣伝する行為などがこれに当たります。
 例えば、有利誤認表示の例として、実際に3割引なのはごく一部の商品だけであるのに、「全店3割引」と表示する行為や、メーカー希望小売価格は25万円であるのに、「メーカー希望小売価格30万円のところを今なら20万円」などと表示する行為などが有利誤認表示に当たります。

(2) 課徴金納付命令(改正景表法8条)   
     対象行為
      内閣総理大臣(消費者庁長官)は、前記の優良誤認表示、または、有利誤認表示(以下「課徴金対象行為」といいます。)をした事業者に対し、課徴金を納付することを命じなければなりません。
 また、優良誤認表示については、内閣総理大臣(消費者庁長官)は、優良誤認表示か否かを判断するため必要があるときは、当該表示を行なった事業者に対し、期間を定めて合理的な根拠を示す資料を提出することができ、資料が提出されないときは優良誤認表示と推定されます。
 なお、違反事業者が相当の注意を怠ったものではないと認める場合は、課徴金は賦課されません。
     課徴金額の算定
     課徴金対象行為をした期間(最長3年)における課徴金対象行為に係る商品・役務の政令で定める方法により算定した売上額の3%が課徴金の金額となります。ただし、その金額が150万円未満となる場合は、課徴金は賦課されません。

(3) 課徴金額の減額(改正景表法9条)   
 課徴金対象行為を行なった事業者が、違反行為を自主申告した場合は、課徴金額の50%相当額が減額されます。

(4) 除籍期間(改正景表法12条7項)
 違反行為をやめた日から5年を経過したときは、課徴金は賦課されません。

(5) 手続保障(改正景表法13条)
 課徴金納付命令は、事業者に金銭的な負担を課す行政処分ですから、違反事業者に対する手続保障として、弁明の機会が付与されます。

(6) 被害回復(改正景表法10条・11条)   
 違反事業者が、自主返金により課徴金の減額を受けようとする場合に、実施予定返金措置計画を作成し、内閣総理大臣の認定を受け、実施予定返金措置計画に沿って適正に返金を実施し、報告期限までに報告した場合、返金金額に応じて、課徴金額が減額されます。また、減額の結果、課徴金額が1万円未満となる場合は課徴金の納付は命じられません。
 
(注1) 詳しくは、消費者庁ウェブサイト
http://www.caa.go.jp/representation/index.html#m01-1)をご参照下さい。
(注2) 食品表示等の適正化について−「日本の食」への国内外の消費者の信頼回復に向けて−(http://www.caa.go.jp/representation/pdf/131213_torimatome.pdf

                                                                    

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