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認知症の方への監督義務-平成28年3月1日最高裁判決-②    (弁護士 村上智裕)

→前回分 「認知症の方への監督義務-平成28年3月1日最高裁判決-①」

前回分に記載しましたように、最高裁は、精神障害者に対する監督義務について、「諸般の事情を総合考慮して、その者が精神障害者を現に監督しているかあるいは監督することが可能かつ容易であるなど衡平の見地からその者に対し精神障害者の行動に係る責任を問うことが相当といえる客観的状況が認められか否かという観点から判断すべきである。」としました。
この判断に関しては、“家族だから・・・”“成年後見人だから・・・”、“介護に携わっていたから・・・”など、日常で強いられる立場を理由に監督責任を負担しなければならないということはなくなり、それらの立場を強いられる方が重い責任まで負担しなければならないことが避けられ、歓迎すべき、との評価がある一方で、解釈の幅が広く、どのような場合に責任が発生することになるのかわかりにくいという見方もあるようです。
確かに、最高裁判決が考慮すべき事情とした6つの要素が持つ意味合いはいずれも狭くありませんが、この最高裁判決には木内道祥裁判官の補足意見が付されており、今後の解釈のヒントになりそうです。
この補足意見は、「責任無能力の制度は、法的価値判断能力を欠く者(以下「本人」ともいう。)のための保護制度であるが、保護としては、本人が債務を負わされないということに留まらず、本人が行動制御されないということが重要である。本人に責任を問わないとしても、監督者が責任を問われるとなると、監督者に本人の行動制限をする動機付けが生じる。本人が行動制限をされる可能性としては、本人に責任を負わせる場合よりも監督者に監督責任を負わせる場合の方が大きい。」・・「保護者、後見人に本人の行動制限の権限はなく、また、行動制限が本人の状態に悪影響を与えるために行動制限を行わないとすると、四六時中本人に付き添っている必要があり、それでは保護者、後見人の負担が重過ぎる。」・・「したがって、・・・(監督義務が発生するには)その者が精神障害者を現に監督しているかあるいは監督することが可能かつ容易であるなどの客観的状況にあるものである必要があり、そうでない者にこの責任を負わせることは本人に過重な行動制限をもたらし、本人の保護に反するおそれがある。準監督義務者として責任を問われるのは、衡平の見地から法的監督義務者と同視できるような場合であるが、その判断においては、上記のような本人保護の観点も考慮する必要があると解される。」としています。
結局のところこの問題は“被害者とのバランスをどうとるか”との問題ですが、6つの要素がもつ意味合いが幅広い分、それらの要素を“いかなる観点から見るのか”によって、結論の落ち着きどころにも差が生じうると思います。補足意見は、その観点について“責任無能力の制度はそもそも本人保護の制度であること”、“保護者・後見人の負担も考慮”、“監督することが可能かつ容易であるなどの客観的状況”という指針を与えるものとして示唆深いのではないかと考えます。

以上

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