建物の滅失と借家権、借地権の帰趨 (弁護士 松本史郎)
第1 災害(大規模災害は除く)で貸家建物、借地権上建物が滅失した場合に借家権、借地権はどうなるのか。
1 借家権
貸家が災害で滅失した場合には借家契約は終了し、借家権は消滅する。
2 借地権
借地上の建物が災害で滅失した場合
(1) 平成4年8月1日より前に設定された借地権の場合
ア 建物再築について借地権設定者に異議がない場合
建物が滅失した日から借地の契約期間が、30年(堅固建物)又は20年(非堅固建物)延長される。
イ 建物再築について借地権設定者に異議がある場合
① 残存期間中は、従前の契約のままで借地権は消滅しません。但し、建物朽廃の場合(災害ではなく、時間的経過の中で建物が朽ち果てた場合)は、借地権が消滅します。
② 残存期間満了時に、更新拒絶は可能ですが、当然に更新拒絶が認められるわけではなく、正当事由が必要となります。但し、残存期間満了時点で借地上に建物がない場合には、正当事由は不要です。
(2) 平成4年8月1日以降に設定された借地権の場合
現在、問題となるケースはほとんどが(1)の場合のため、省略します。
第2 地震、津波、河川氾濫、広範な火災等の大規模災害によって、貸家建物、借地上建物が滅失した場合に借家権、借地権はどうなるのか
1 大規模災害の場合に被災した借地人、借家人、保護のための措置を定めた法律として
(1) 「罹災都市借地借家臨時処理法」(昭和21年法律第13号。以下「罹災都市法」といいます)という法律がありました。
しかし、阪神・淡路大震災に際し、罹災都市法を適用した結果、かえって復興を阻害したという指摘があり、罹災都市法を見直す必要性が認識され、改正作業が行なわれた結果、平成25年に
(2) 「大規模な災害の被災地における借地、借家に関する特別措置法」(平成25年6月26日法律第61号。以下「借地借家特別措置法」といいます)が成立し、(1)の罹災都市法は廃止されました。
2 では、廃止となった罹災都市法(旧法)と借地借家特別措置法(新法)とで、どこが変わったのでしょうか。
以下、主な変更点を列記します。
|
||||||||||||||||||||||